【書評】「ストーカーとの七00日戦争」

本屋大賞、2019年ノンフィクション本大賞のノミネート作品が発表されました!発表は11月。どの作品が大賞に選ばれるのか注目ですね!この6作品について、当ブログでも随時紹介していきます。

 

ストーカーとの七〇〇日戦争

 


著者の内澤旬子さんは、世界各国を旅してのイラストルポや、香川の小豆島での暮らしを綴ったエッセイ、『漂うままに島に着き 』などで知られ、2011年には『身体のいいなり 』で講談社エッセイ賞を受賞されています。
本作は、内澤さんご自身のストーカー被害を綴った、渾身のノンフィクション。

ネットをきっかけに交際を始めた男性Aとの別れ。ありふれた終わりを迎えるはずだった関係は、Aが内澤さんからの別れ話に怒り、豹変したことで風向きが変わります。

執拗に送られてくるSNSのメッセージに不安を覚え、警察に相談する内澤さん。しかしそこでは思いがけずAの前科を知ることになり、状況はさらに深刻に…。

 

 個人的おすすめポイント


 

1. 誰にでも起こりうる、ストーカー被害

恋人に別れを切り出され、納得がいかずに何通ものメッセージを相手に送りつけてしまう、それとも、自分の方がそのメッセージを受け取る側になってしまう…。これ自体はまあ、よくありそうな話ですよね。笑

しかし、「お前の秘密を暴露する」「家に押しかけてやる」「滅茶苦茶にしてやる」などと身の危険を脅かすようなメッセージが届いたら、ゾッとするでしょう。内澤さんがAに送り付けられたのも、身の縮むようなひどいメッセージの数々でした。さらにAは、内澤さんの身辺まで突撃、全く関係のない人物にまで危害が及びかねない行動も起こします。

ストーカーと言われる行為には、待ち伏せやつきまとい、無言・連続電話(メール)などさまざまあり、殺人・傷害事件まで発展するケースもあります。きっかけは内澤さんのように元々は恋人同士で、別れに納得できなかったというものが多いようですね。事件化して報道される場合、犯人は圧倒的に男性が多い気ような気がしますが、実際の男女比はほぼ五分五分なのだとか。

男性・女性関係なく、誰にでも起こりうる被害であり、反対に感情に任せるまま一線を越えてしまえば、自分の方が相手に恐怖を与えかねません。

 最近はSNSを通しての被害も多く、実はストーカーは、身近な脅威だったのです。

 

2.被害者、闘いの日々

被害にあい、警察に相談した内澤さん。しかし、それで一件落着とはなりません。

Aを訴えるか示談で収めるのか。それにはどのような手続きが踏まれるのか。理解を示してくれない弁護士とのやり取り、難しい書類に目を通し、金銭・住居の心配、何より、Aに恨まれているという恐怖。内澤さんは疲弊していく一方です。

ストーカー被害は別れ話から発展することが多いせいか、単なる「痴話げんか」と取られることも多いそう。

「ストーカー被害者に寄り添ってくれる人はいないのか?」

内澤さんの悲鳴に応える人物が現れるのは、本書が3分の2ページも過ぎるころ。ストーカー加害者と会って話をし、誤解や思い込みを解いていく。被害者と加害者の仲介を務める専門のカウンセラー、小早川先生と、本をきっかけにして知り合うことになります。

解決はもちろんのこと、寄り添うことで被害者がどれだけ救われるかという点を内澤さんは本書の中で懸命に説いています。

さらに、小早川先生との出会いをきっかけに、内澤さんはAや加害者たちが被害者への執着を捨てるにはどうしたらよいか、という点にも目を向け始めます。

ストーカー案件に限らず、被害者が守られ、本当に安心して暮らしていける環境づくりは何にも勝る課題ですね。

 

感想


 

正直、被害者がこれほどの困難を抱えることになるとは想像していませんでした。訴えたからと言って、被害者の身の安全が必ずしも確保されるわけではなく、弁護士によって対応もまちまち。裁判まで持ち込んでも、数年の刑期が終われば加害者はたちまち戻ってきます。被害者への恨みが晴れないままということも考えられ、被害者としてはいつまでも安心できる状況ではなく…。

SNSの普及でさらに被害が深刻化している点も見られますよね。最近では、自撮り画像の瞳に映った景色で住所を特定したというゾッとする事件もありました。

内澤さんも被害にあった傷を抱えながら、文筆家として相当の覚悟を持ってこの本を出されており、ストーカー事件の実態が少しでも多くの人に届くようにという願いの伝わってくる一冊です。

 

 

 

 

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