【書評】「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」

 

 2019年、ノンフィクション本大賞が決定!今回はこちらの受賞作についてご紹介します!

 

 

 

英国で暮らし、アルゼンチン人の父と日本人の母を持ち、カトリックの名門小学校を卒業した息子が選んだのは、最近まで学校ランキングの底辺にいたという中学校。

いじめも喧嘩もあるし、人種や階級の差別にあふれた環境は、それまでの温かな名門校の雰囲気とはえらい違いである。かすかな不安を抱えたまま始まった学校生活だが、案外、息子は順調に適応しているようだった。そんなある朝、母は息子のノートの端に小さな落書きを発見する。

「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー。」

 小さく息を潜めるようなその言葉を、息子はどんな気持ちで書いたのだろうか?

英国社会で生き、出会うものすべてにぶちあたりながら成長する息子と母の日常を綴った、リアルなエッセイ。

 

 中学生の日常は、案外クールで面白い。

大事な点を何もかもすっ飛ばして、いきなり低レベルな感想になりますが「なんて良い息子さんなんだろう…」としみじみ思いました。私の中学時代はもっと感情にまかせていたものだけどなあ…。

人種・思想の違いや貧富の差、LGBT。中学生の”息子”さんは学校の授業や友人関係の中でさまざまな個性に出会います。そして日本人にも英国人にも属さない自分のアイデンティティーについて。それらは場所や場合によっては差別され、疎まれるもの。しかし息子さんは周りに流されず、時には両親と率直に意見を交わしながら自分で考え、在り方を選択していきます。

中学生の日常を読んでいるはずが、この本にあるのは、年齢問わず現代を生きる私たちそれぞれが今まさに問いかけられている課題の数々。息子さんのふとした疑問や友人にかける言葉には、結構ぐっとくるものがあります。

新鮮だったのは、「自分は異性愛者だと思う」「自分はまだ分からない」という息子さんと友人たちの会話。自然にそんな話をする時代が来ているのだなあと思い、ここで感動を覚える自分はまだまだその時代には行けないなあと、がっかりするよりは視界が開けたような感覚でした。

 

「人と違うかも」というのは、実は多くの人が思ったことがあるのではないでしょうか?人種や家庭のことだけではなくて、「あ、この考えはみんなと違うんだ」とか「自分はまわりと比べてちょっと身体が小さいかも」とか。もしくは誰かに対して、「この人はちょっと違うな」と思うこともあるかもしれません。まあいいやと受け入れられることもあるし、深刻になってしまうこともある。そういうささいな違和感に、ちょっとだけプラスの何かを与えてくれる、そういう本だなあと思います。

最後まで読み終わり、「うわあ、もう終わっちゃった!」とがっかりした本は久々でした。とはいえ、本作のもとになった連載はまだ続いているようですので、勝手に次作が出ることを期待しています。

 

 

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