今回ご紹介するのは、昔話絵本の制作に情熱を傾けられた絵本作家で画家の赤羽末吉さん。
作家デビューは50歳と遅咲きでしたが、たくさんの名作を遺されました。
お名前を知らなくても「あ、これ知ってる!」というお話があるかも?
書店や図書館でぜひ探してみてください!
赤羽末吉さんプロフィール
絵本画家として活動し始めたのは50歳の時と言う赤羽末吉さん。
1910年、東京・神田で生まれました。兄弟の末っ子として生まれたので、「末吉」と名付けられたそうです。赤羽末吉さんのお名前は本名なんですね!
こどもの頃は映画や舞台に夢中になり舞台美術家になるのを夢見たこともありました。
21歳の時、画家・絵本作家の八島太郎氏のもとでデッサンを学び、画家になりたいと言う思いもあったようですが、1932年になると満州に渡り、運送会社で働き始めます。
22歳から37歳まで暮らした満州。
他の若い画家たちと画家集団を結成したり美術展覧会に出品するといった活動を続けていました。。
さらに、異国の地での暮らしが後の画風に影響した部分もあったようですね。
1947年に日本に帰国すると、アメリカ大使館に勤め、アメリカの文化を日本に紹介する展示のデザインのお仕事をされていたほか、フリーで挿絵の仕事をしたり童画会展への出品など絵の制作に取り組みます。
そして1958年、福音館書店の編集者だった松居直氏との出会いで、”絵本作家・赤羽末吉”が誕生します。
松居直氏は、「昔話を新しいイメージで絵本にする」ことに取り組んでいたそうで、赤羽さんの絵の品格とオリジナリティーに惹かれたとおっしゃっています。
「雪国を描きたい」という赤羽さんの希望が通った形で、『かさじぞう』が刊行されました。
絵本作家としてご活躍されていた間には、絵本の制作のほか、舞台美術も手掛けられていました。
あの『徹子の部屋』にもご出演されていたって、知ってましたか?笑 徹子さんとどんなお話をしたんだろう~。とにかく、そのくらい、民間に親しい作家さんだったということでしょうね。
児童出版文化賞、国際アンデルセン賞優良賞など多数の受賞歴も。
30年ほど絵本を描き続けた赤羽末吉さんですが、1990年、80歳でご逝去されました。
「慣れで描いた絵は絵でない」妥協しない制作魂
長い間を中国で過ごされた赤羽末吉さんは、日本の風土について「緑が多く、湿度が高い」と感じていました。
この「湿度が高い」を絵に表現するため、赤羽さんが辿り着いたのが墨です。
雪の深い東北や新潟に5年間通い、雪の表現について試行錯誤を重ねました。その経験がもとになって出来たのが「かさじぞう」です。
地面に積もるふわふわとした雪の見た目、湿気の多いぼたん雪。薄墨でしっとり描かれています。
また、筆の柔らかい線が素朴な風合いを出し、昔話に親しみやすさが生まれました。
日本、中国、モンゴルなどの国の違い、雪国など赤羽さんが手がけた絵本の舞台は様々ですが、「どのようにして風土を表現するか?」という部分にはこだわり続けたようです。
時には実際にモデルの土地へ足を運び、スケッチや取材を繰り返しました。
「慣れで描いた絵は絵でない」
赤羽末吉さんは30年ほどの作家人生、強いこだわりを持って自分を鼓舞し、制作に取り組んでいたのです。
名作を一気読み!おすすめ3選
それでは、赤羽末吉さんがこだわりにこだわり抜いて描かれた絵本を3冊ご紹介します!
ストーリーもさることながら、ぜひぜひ挿絵も楽しんでくださいね!
ももたろう 再話/松居直
色々なバージョンのある「桃太郎」。
私が小さい頃に読んだのは、赤羽末吉さんの「ももたろう」でした。
小さいころに読んだ昔話って、意外と大人になっても覚えてるんですよね。
明治以降、桃太郎は鎧を身に着けた姿が定着していたそうで、赤羽さんは「桃太郎を庶民の手に戻す」という思いで描き上げたのだとか。
時には大胆で、時には繊細な色使いが良いです。水の量で操るグラデーションが柔らか。
松居さんの文章も面白いんですよ~。
桃は「つんぶく かんぶく」流れてきて、桃太郎は「ほおげあ ほおげあ」と産まれる。
なかなか思いつかないフレーズですよね。
そういえば、定番の「どんぶらこ どんぶらこ」は何が元なんだろう?
「スーホの白い馬」は、赤羽さんが実際にモンゴルでスケッチした絵や資料を元に作られました。私は小学校の教科書で読みましたね。
絵本を改めて開いて絵に注目してみたら、すごい!面白い!
1ページ1ページ、表現の仕方が全然違うんですよね。
「ももたろう」は淡い色合いでしたが、線がはっきり、カラッとしてるというか。
白馬の凛々しさが伝わってきます。
狼の毛並みに荒々しさがあるのも個人的に見て欲しいポイント。笑
だいくとおにろく 再話/松居直
村の人たちに頼まれて、川に橋をかけることになった大工。
しかし川には鬼がいて、「ここに橋は掛けられない」と言う。そしてさらには、「目玉をくれたら代わりに橋をかけてやってもええぞ」と言い出して…。
カラーのページとモノクロのページが交互になった絵本。柔らかい墨絵の後にきっぱりした色合いを見ると、余計鮮やかに感じます。
余韻を残さないスパッとした終わりも面白いですね〜。
まとめ
いかがでしたか?
長く愛される児童本の作家さんは、独自のこだわりや読者である子どもたちへの想いを持って制作されている方が多く、作家研究やエッセイを読むとさらにさらに面白く作品を読めるんですよね。
そういうひたむきな作品こそ、ぜひ長く繋いでいきたい!
参考図書
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【セミ】 #読了
— ちこやま/ 大山ちこ (@chiko_yama398) 2020年8月23日
高いビルで人間と働くセミ。
昇進なし。感謝されない。バカにされる。
セミだから。
でも、そろそろお別れの時間ー。
大人向け絵本。一言で言うとショッキング。散々いたぶったセミに、最後は突き放されたような気持ちになり…。うーん、読んでみて欲しい。https://t.co/XyBdhkJzef
最後までお読みいただきありがとうございました!
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