以前、こちらの記事で、図書館を使った調べるコンクールについてご紹介しました。
そこで、私も調べる学習に取り組んでみようと思い、テーマを決めてちょくちょく図書館に足を運び、研究に取り組んでまいりました。
今回は、私の研究結果をご報告したいと思います!
テーマ
皆さん、鳥の群れが空を飛んでいるのを見たことはありますか?
うちの最寄り駅には、木の実を狙ってだと思われますが、夕方になると数百羽はいるんじゃないかという鳥の群れが駅前の木に群がって、ピヨピヨピヨピヨと、まあなんてかしましいこと・・・
その群れが空を飛んでいるのを見ていると、大きく円を描くように飛び、たまには左に曲がり、次には右に急旋回と縦横無尽に飛び回っています。
しかし、不規則に飛び回っているように見えるのに、数十羽の鳥が1羽もはぐれることなく、一糸乱れぬ動きで飛んでいるんですよね。
お決まりのコースをたどっているのでしょうか?
誰かが合図を出しているのかな?
不思議だなあ、なんでだろう?
ということで、私の自由研究のテーマは、こちら!
空を飛ぶ鳥の群れがきれいに統制されているのはなぜ?
このテーマにした理由
実はこのテーマ、小学生の頃に憧れていた男の子が夏休みの自由研究で発表していたものなのです。
しかし、肝心の研究結果をどうしても思い出せないんですよね。たぶん・・・その子に見とれて真剣に聞いていなかったのでしょう。笑
鳥の群れをみるたびに、「どんな理由だったんだろう」と追憶する二十数年の日々・・・。
ということで、これを機に調べてみることにしました。
予想
ズバリ!
リーダーが合図を出し、群れを誘導しているのでしょう!
「次は左回りだよ~、その次はあっちの方角に飛ぶよ~」と。
合図は鳴き声か、コウモリのように人には分からない超音波を使っているのかも?
調べてみよう!
さっそく最寄りの図書館へ。
駅前に集まっていた鳥は、他人に聞いたところ、どうもムクドリのようです。
ムクドリの群れは結構色々なところで目撃されているみたいですね。
youtubeの動画を拝借いたしました。
凄すぎる。笑
世界の終焉かのような光景。
まずはムクドリの生態を調べてみます。
こちらの本によると、市街地や農耕地で見られ、椋(むく)の樹洞に巣をつくることから、ムクドリという名前がついたそうです。
また、敵にねぐらを知られないよう、眠る前にみんなで一度集まってフンをするそう。
夕方に見かける群れは、眠る前に集まった一団なのでしょうね。
特に記述がないところを見ると、群れで綺麗に飛ぶのはムクドリだけの特性ではないようです。
ならば、鳥全体に範囲を広げてみましょう。
①超音波説の検証
この本に驚くべき記述が。
イヌの耳は50000ヘルツ、ネコでは65000ヘルツくらいの、いわゆる”超音波“まで聞き取る能力をもちます。しかし「耳がいい」と思われている鳥類の聞き取り能力は、人間の耳に近いか、それともやや劣るレベルです。
P120「1鳥は難聴にならない、鳥の耳は老化しない」
なんと!
超音波説がいきなり否定されてしまいました。
鳥の耳が聞き取れるのは10000~15000ヘルツくらいまでとのこと。
ピヨピヨ呼び合っているから、耳も発達しているのだと思っていました。
②リーダーの号令説の検証
次は分厚い本を拝借。
こちらにはP299~300に渡りについての気になる文章が。
鳥は、太陽・星・磁場を利用して目的地へ向かうのだそう。
これについては先に紹介した「ときめく小鳥図鑑」にも、このような記載があります。
N:渡りのルートはどうやって判断しているのでしょうか。
H:ルートは遺伝的にプログラムされていますが、昼間は太陽の位置、夜は星座を目印にして渡ります。
P102 「渡りの不思議」
むむ、これは何かヒントになるかも?
鳥の目印になりそうなものはなかなか思いつかないですが、決まったルートをたどるのなら動きが統制されているのも頷けます。
しかし、今回のテーマにズバリ答えてくれる記述は残念ながら見つからず。
意外と難問だったのか・・・?
検索機と格闘すること数十分、
ついに「これは・・・!」という本が。
その名も「鳥はなぜ集まる?」
鳥がなぜ群れをつくるのか、そして普段目にする鳥たちの行動について最新の(と言っても20年以上前の本ですが・・・)社会生物学の観点から解き明かした本。
まずはP85の中で、鳥の群れのよく統制がとれていることに触れていて、「リーダーがいて号令しているわけではない」と明言されています。
リーダーの合図説も否定されてしまいました!
それではどうやってあんなに一体性のある飛び方ができるのでしょうか。
鳥の群れがきれいに連なって飛べるのはなぜ?
同じくP85にユタ州立大学のポッツ氏が、十六ミリカメラを使ってシギを撮影し、群れの動きを解析した研究を紹介しています。
ハマシギの群れが方向転換をする時、まず1~3羽の個体が方向を変えます。ついでその動きが群れ全体に波のように伝わっていきます。
(中略)
最初に方向転換した個体の動きが視覚によって全体に伝わるわけですが、各個体はとなりの個体を見てその動きを始めるのではなく、遠くにいても変化の波の到来を予測して反応していたのです。
P86「第8章 群れは利己性の産物」より
みなさん、分かりましたか?
「変化の波を予測して」
・・・人間の私にはちょっと理解しがたい答えです。
最初に方向を変える個体は、先頭の鳥とは限らず、たとえ最後尾の鳥だったとしても、波は伝わるのだそうです。
波が隣から隣へ伝わるスピードは0.015秒。
人間の場合は0.1秒なので、約6倍の差があるとのこと。
これを踏まえ、改めて他の本を読みこんでみると、以下のような記述を見つけることができます。
(群れの行動について)仲間が何をしているかをよく注意していてすぐに反応し、それにしたがって自身の行動を合わせる。
『鳥類学』P321「群れ」
人がある“物”を指さしたとき、犬は指先を見る。
一方、鳥はその人の視線を追って“物”を見ることができる。
食べるものを見つける、あるいは危険を察知する本能ゆえの能力。
『知っているようで知らない鳥の話』
P166「2 鳥は他者の視線を追うことができる」
「ときめく小鳥図鑑」では渡りの話の中に、「全体の雰囲気が高まってきて誰かが飛び始め、それにみんなが気付いて渡りが始まっていく」とあり、このあたりも何か通じるものがあるのかも。
「そろそろ方向を変えるぞ~変わるころだぞ~」という雰囲気が伝わっていくという感じ・・・なのかな?
他にもいくつか本を読んでみましたが、残念ながらこれ以上の記述は見つけられませんでした。
結果
ということで、今回調べた限りでは、研究テーマ「空を飛ぶ鳥の群れがきれいに統制されているのはなぜ?」の答えは、「方向転換をする波を予測しているから」ということになりました。
鳥がどうして群れを作るのか、さまざまな本で特に言及されている理由は、
・餌を見つけやすい。
・敵から身を守るため。
の二つです。
目を増やすことで、情報を察知しやすくしているのですね。
「変化の波を予測する」能力も、群れからはぐれないように、という意思のたまものなのかもしれません。
まとめ
いかがでしたか?
本当は図書館での本の探し方なんかも織り交ぜた記事にしたかったのですが、この文量でもう嫌気が差し、挫折しました。
ともかく長年の疑問が解決されて、スッキリです。
人間の杓子では測れないことが、自然界にはまだまだたくさんあるのでしょうね・・・。
参考図書
改めて、今回主に使用したのは以下の4冊です。
「鳥類学」「鳥はなぜ集まる?」については、国立国会図書館のものを利用しました。
●● このブログを書いたひと ●●
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