夏に読みたい!おすすめ小説3選

 

 

今回のテーマは 「夏の本」です。

 

 

ロビンソンの家 
打海 文三

 

 

あらすじ

17歳の夏を、リョウはかつて家族が移住するはずだった「Rの家」で過ごすことにする。その町は、彼の母が自殺を図った場所でもあった…。

 

甘美で、せつない青春ミステリ

主人公のリョウは、海辺に立つ「Rの家」で共に暮らすことになった伯父、従姉妹、父の恋人らと対話を重ねながら、母の自殺の背景を推察していきます。夫の不倫、介護、セクシュアリティ……。母が解き放たれたかったものとは何だったのか。

『ロビンソンの家』は、2001年に出版された『Rの家』の改題。ここで紹介する文庫には、巻末に雑誌連載版第1回を収録しています。書籍化にあたって、著者は雑誌連載を大幅に改稿したそうですが、そこにはどんな意図があったのでしょう。

読書メーターでみんなのレビューを読む

 

リリアンと燃える双子の終わらない夏 
ケヴィン・ウィルソン

 

 

あらすじ

旧友の頼みで夏の間10歳の双子の姉弟を世話することになったリリアン。ところがこの双子は、身体が発火するという体質を持っていて…。

 

笑って泣ける愛と友情の物語

なんて心を掴まれるタイトルでしょうか。ファンタジーなのか、はたまた何かの比喩なのか?

こちらはアメリカの作家ケヴィン・ウィルソンによる愛と友情の物語。夢も希望もなく、パッとしない人生を送ってきたリリアン。ある時、政治家の夫を持つ学生時代の友人から「義理の子どもたちの家庭教師をしてほしい」と頼まれます。しかし、双子だというその子たちは、興奮すると身体が燃えてしまうという、普通ではない体質を持っていました。

「政治家の父親の体面もあって疎まれながら生きてきた子どもたちを自分なりのやり方で励ますリリアンと、少しずつ彼女を信頼し、心を開いていく子どもたちとの関係は、読んでいるうちにとても愛おしく感じられます。

"子どもの身体が燃える"という奇想天外な設定を組み込みながら、リアルな世界で生きていこうとする3人の姿に、大きな感動をもらえる作品です。

読書メーターでみんなのレビューを読む

 

渇き、海鳴り、僕の楽園 
深沢 仁

 

 

あらすじ

夏休み、同級生の代わりに"楽園"と呼ばれる異国の島で、墓守のグレイを手伝うことになったウィル。しかし島で暮らすうち、彼はグレイの抱える秘密を知ることになる…。

 

少年の鬱屈とやるせなさを描き切った傑作小説

船頭なしではたどり着けない異国の島。青い海とどこまでも広がる墓地だけがある静かな場所……厳かで美しい情景が浮かびます。しかし、主人公のウィルはこの場所に全く魅力を感じません。全てに否定的で孤を貫く少年の鬱屈や苛立ち、そしてパノラマの美しさのギャップが、物語にうら悲しさを感じさせます。

この島で、ウィルは墓地を守るグレイの哀しい秘密を解き明かしていくことになります。しかし、この物語には本の中では語られないストーリーが、まだいくつもあるはずなのです。島の成り立ち、登場人物たちの過去、あるいは未来。それらを隠し秘め、物語は残酷なまでに終幕する。"楽園"の美しい幻想とやるせなさを残して。心をかき乱すような、圧倒的な小説。

 

 

この記事に似ている記事

 

最後までお読みいただきありがとうございました!

 にほんブログ村 本ブログへ