2023年下半期 芥川龍之介賞・直木三十五賞候補作

 

12月14日、2023年下半期の芥川龍之介賞直木三十五賞の候補作品が発表されました。
今回の記事では、2つの賞の候補作をご紹介します。
 

芥川龍之介賞とは?

 
『羅生門』 『地獄変』などの作者、 芥川龍之介 の名を記念して制定された賞です。
新人作家が手掛けた、最も優秀な純文学の中・短編作品に贈られ、上半期・下半期の年2回、選考会が行われます。
1935年に始まり、2023年の下半期選考会で170回目を迎えました。

 

 

前回受賞作

 

前回、2023年上半期の芥川賞受賞作は、市川沙央さん『ハンチバック』でした。

 

背骨が右肺を押し潰すかたちで極度に湾曲した重度障害を抱える女性を主人公に、障害者の生と性の困難を隠し立てなく曝した作品。著者の市川沙央さんも筋肉の構造に異常がみられる筋疾患先天性ミオパチーという難病と診断されおり、ご自身を投影しているという主人公の心情と日常のリアリティーが大きな反響を呼びました。

 

2023年上半期 芥川賞候補作

 

それでは、2023年下半期の候補作を見ていきましょう!

 


迷彩色の男
安堂ホセ

男性限定のクルージングスポットで、恋人が何者かに腹部を刺され、血まみれの状態で発見される。10人の容疑者は逃走し、私の日常は混沌を増していく――。安堂ホセさんは、前作『ジャクソンひとり』に続き、2度目の芥川賞候補作となります。流麗な文体とは裏腹に、歪んだ怒りが疾走し、圧巻の迫力に満ちた作品。

Blue

川野芽生

『人魚姫』を翻案したオリジナル脚本を高校の文化祭で上演することになり、”男”という性別を飛び出して人魚姫を演じた真砂。しかしその数年後、舞い込んだ再演の話に真砂は乗り切れない。女の子として生きようとすることを辞めてしまったから――。本作は文芸雑誌『すばる』の特集「トランスジェンダーの物語」に寄稿された作品。望んだ道を選びながら、望むように生きられない痛みが描かれています。

東京都同情塔

九段理江

前作『Schoolgirl』から2度目の芥川賞候補作となった九段理江さん。今作の舞台は、ここではないもう一つの日本。”寛容論”が世間に受け入れられる中、新宿に犯罪者のための新しい刑務所が建設される。建築に携わる牧名は、犯罪者に寛容になれない自分と仕事のギャップに苦悩しながらも、パワフルに未来を追求していく――。

猿の戴冠式

小砂川チト

「いい子のかんむりは自分で自分にさずけるもの。」競技中に起こしたある事件以降、引きこもっていた競歩選手はテレビの中に「おねえちゃん」を見つける。それは言葉を機械学習させられた過去のある類人猿ボノボだった――。何かにもがく一人の女性とボノボの交流を、幻想と現実が入り混じる独特の世界観で描いた作品。


アイスネル
ワイゼン

三木三奈

 

仕事も恋愛もうまくいかず、友人とも衝突し、足掻いて空回って迎えた「静かな崖っぷち」……。32歳のピアノ講師を主人公に、ままならない日常を切なさの漂う筆致で描いた作品。本作と2020年に文學界新人賞を受賞した『アキちゃん』を併録した『アイスネルワイゼン』は、三木三奈さん初の刊行書籍となります。

 

 

 

直木三十五賞とは?

 
『南国太平記』相馬の仇討』などを手掛けた 直木三十五 の名を記念し、新進・中堅作家によるエンターテインメント作品のから、最も優秀な作品に贈られます。芥川賞と同じく、上半期・下半期の年2回、選考会が行われ、2023年の下半期選考会で170回目を迎えました。

 

 

前回受賞作

 

前回、2023年上半期の直木賞受賞作は、垣根涼介さんの『極楽征夷大将軍』、永井紗耶子さんの『木挽町のあだ討ち』の2作品でした。

 

極楽征夷大将軍

 

「やる気なし」「使命感なし」「執着心なし」、”日本一だらしない”武将・足利尊氏。彼のような人物が権力の頂点へと登り詰められたのはなぜなのか、謎に包まれた初代将軍の秘密を解き明かす歴史小説です。

 

木挽町のあだ討ち

 

ある雪の降る夜、若衆が父親を殺めた下男を斬り、みごとな仇討ちを遂げた。2年後、若衆縁者だというある若侍が事件の顚末を聞きたいと木挽町を訪れる。人々の話から炙り出される真相は…。窮屈な社会を不器用ながらに生き抜こうとする人々を描いた、革命的時代小説です。

 

 

2023年下半期 直木賞候補作

 

それでは、2023年下半期の候補作を見ていきましょう!

 

なれのはて

加藤シゲアキ

テレビ局員の守谷は、異動先で出会った吾妻李久美から祖母の遺品である絵を使って「たった一枚の展覧会」を企画したいと相談される。絵を描いた謎の画家の正体を探ると、ある一族が暗い水の中に沈めた業に繫がり…。発売から2ヵ月で10万部を突破、構想から3年の歳月を経て完成したという”運命”のミステリ。


ともぐい

河﨑秋子

明治後期、人里離れた北海道の山中で犬を相棒に自給自足の暮らしを送る熊爪。ある日、血痕を辿った先で負傷した男を見つける。男は、冬眠していない熊「穴持たず」を追っていたというが…。生々しく真に迫る描写で、人にも野生にも嵌まらない荒々しい一人の男の生きざまを描く純文学。


襷がけの二人

嶋津輝

親が決めた縁談で、裕福な家に嫁いだ千代。夫とはいまひとつ上手く関係を築けない千代だったが、元芸者の女中頭・初衣との間には、仲間のような師弟のような絆が芽生える。しかし、戦火によって離れ離れになり、すべてを失った千代は住み込みの女中に、視力を失った初衣は三味線の師匠となり…。「普通」から逸れてもそれぞれの道を行くふたりの女性を描く感動作。


八月の御所
グラウンド

万城目学

高校駅伝ピンチランナーとして挑む方向音痴な女子高校生。借金のカタに草野球大会に参加する羽目になった大学生。幻のような出会いが生んだドラマとは……。京都を舞台に、非日常と現実が入り混じる2篇の青春小説を収録。、発売前から「今年No.1」の声が多数届いた、万城目ワールド全開の作品。


ラウリ・クースク
を探して

宮内悠介

 

ソ連時代のエストニアに生まれたラウリ・クースクは、コンピュータ・プログラミングで稀有な才能をみせ、ロシア人のイヴァンと出会う。2人は魂の親友と呼べるほどの信頼で結ばれるが、ソ連が崩壊し、2人の友情も引き裂かれる……。「“何もなさなかった人物”を書きたかった」という著者の宮内さん。激動の中で、それでも生きていく一人の男の人生を辿る。


まいまいつぶろ

村木嵐

 

口がまわらず、歩いた後には尿を引きずった跡が残るため、「まいまいつぶろ(カタツムリ)」と呼ばれ蔑まれた第9代将軍・徳川家重。麻痺を抱え廃嫡を噂されていた若君の側に控えるのは、ただ一人、彼の言葉を解する後ろ盾のない小姓・兵庫。しかし、疑義を抱く老中らの企みが2人を襲い……。家重と兵庫、2人の孤独な闘いに落涙必至の歴史小説

 

 

まとめ

 

いかがでしたか? 芥川賞直木賞の選考委員会は、2024年1月17日。 発表を楽しみに待ちましょう!

 

公式サイト


最後までお読みいただきありがとうございました!

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