【書評】「東京貧困女子。」

本屋大賞、2019年ノンフィクション本大賞のノミネート作品が発表されました!発表は11月。どの作品が大賞に選ばれるのか注目ですね!この6作品について、当ブログでも随時紹介していきます。

 

 

東京貧困女子。: 彼女たちはなぜ躓いたのか

 

かつてのAV・風俗業界は、カラダを売るというリスクを冒し、覚悟を決めて堕ちてしまえば楽に稼げる特殊な産業だった。しかし今、業界にはカラダを売りたい女性が急増し、リスクを背負っても稼ぐどころか普通の生活さえままならないという声が上がっている。――日本はおかしくなっているのではないか?これまで業界の取材を続けてきた著者は、その延長として女性の貧困問題へ乗り出す。日本の女性たちに今、何が起きているのか?

 

個人的おすすめポイント


 

1. ”裸の世界”はもう特殊ではない

パパ活」という言葉を聞いたことはあるだろうか。SNSを中心に、若い女性たちが自分を支援してくれる”パパ”を探している。一緒に食事をするだけということもあれば、肉体関係を結ぶこともる。このパパ活は何も特殊なことではない。普通のどこにでもいる学生や働く女性たちが手を出している。積極的な女性もあれば、そうでない女性もいる。その根底には貧困が見え隠れする。

本書で取材に答える何人もの女性が口にするのは、とにかく「お金がない」ということ。学費を払うお金、生活するためのお金、子どもを養うためのお金…。時間のないギリギリの生活の中で、手軽に稼げる風俗やパパ活に手を出していく。家庭の事情や抱えた精神疾患など理由はそれぞれである。しかし、何も彼女たちは、「高価なモノが欲しい」と言っているわけではない。普通の、人並みの生活をしたいがための、苦肉の策なのである。そして忘れてはいけないのは、彼女たちはあくまで”代表者”であり、世の中にはそんな女性がごまんといるのだ。

たくさんの若い女性たちが、周りの理解も得られず身体と心をすり減らしている。その現状はあまりに腹立たしい。

 

2.日本は貧困へ向かっている

昨今、ひとりで子どもを養うシングルマザーは多い。未だに男性よりも圧倒的に年収の少ない女性たちがたった一人で子どもを育てるというのはどういうことなのか。家庭を持つ女性たちの取材からは、意外にも、行政の働きが見えない。それどころか、切り捨てられているようにも感じる。さらに、本書で執拗に取り上げられる福祉業界の実態は、国はなんの想定も対処もなかったのか。確かに高齢化する社会で、老人たちの声は大きくなる一方である。しかし若い世代が潰されるべきではない。

取材に答える女性たちの貧困は、必ずしも自業自得と言えるだろうか?その躓きは決して他人事でなく、弱いものから嵌められていく枷かもしれない。となれば、いつか、私たちにもその順番が来るかもしれないのである。

 

感想


 

 「東京貧困女子。」の取材に答える方の中に、図書館司書という女性がいる。同職の身としては、あまり取り上げてもらえる職業でないという意識があったので、特に熱心に読んだ。そして、私も貧困を抱えた一人ということを実感したのである。私の手取りは15万に満たない。貯金は出来ず、まとまった金額のいる司書資格は(面倒という理由もないではないが)まず取れそうにない。資格がなければ重宝もされない。出世のようなことはないだろう。それでは転職となれば、私は不況を生きてきた身であるので、そう簡単に職が見つかるとはそうそう思えない。職を失うかもしれないというリスクを冒すよりは、決して贅沢は出来ないけれど今の生活のままの方がいい。女性たちの葛藤は良くわかる。

「もっと苦労しろ」「甘やかされてる」という年配層と私たちは、今、決定的に違う日本を生きている。求人広告に「大卒」と並ぶのだから、子どもたちはどうしても学校に通わねばならない。年齢に上限のある仕事も多い。一度躓いてしまえば、選択肢は大幅に減っていく。

生き辛い。

何もできないのか、という自問は本作を読みながら何度もした。本書に解決策はない。著者はどことなく諦めているようでもある。まずは多くの人が日本の貧困に気付かなければいけない。本書は果たして、その足掛かりになれるだろうか。

 

 

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