今回のテーマはおとなの絵本です。
絵本には「子どもが読む」というイメージがありますが、大人になってから読んでも意外と面白いものです。そして、 大人向けに描かれた絵本 というものもあります。
今回はそんな、大人向けに描かれた絵本を5冊紹介していきます。
アイデアの種
アイデアを手に入れた、売れない作家のてん末
売れない作家が友人にもらった“アイデアの種"。それを庭に埋め 、木になった実を食べると次々に素晴らしいアイデアが。喜 び勇んで小説にとりかかる作家でしたが……というストーリー。
アイデアが浮かぶシーンは文章での描写はなく、近未来やファンタ ジー的な物語を感じさせる見開きいっぱいの美しいイラストのみ。読んでいるこちらも想像が膨らみます。
落語のようなリズムの良い語りと皮肉のきいたオチも気持ちが良い 。
アイデアが浮かぶシーンは文章での描写はなく、近未来やファンタ
落語のようなリズムの良い語りと皮肉のきいたオチも気持ちが良い
実は隠されたもう一つのストーリーがあるとかないとか……。
いろぬすびと The Color Thief
愛か悪か。いつまでも余韻を残す物語
病気で目が見えない孫を憐れむあまり、街から色を消してしまった 老人のお話。彼は色を消すことができる不思議な力を持っており、 夜が迫るころ街に出向き、あらゆる物の色を消してしまうのです。
愛情ゆえとはいえ、色が無くなった街は大混乱。彼の行いと結末を どう受け止めるかは、人によって様々でしょう。
愛情ゆえとはいえ、色が無くなった街は大混乱。彼の行いと結末を
移動するものたち
かすかな光を信じて、進むものたち
この絵本には文字がありません。ただ、種のちがう様々な動物たち が一つの集団となり、漆黒の中を歩いていく様子が描かれます。 その旅路で、彼らは何度も"死"や"危険"と対面することに。 彼らは一体、どこから来て、どこへ向かうのか。
明かしてしまうとこの絵本は、『移民・難民』をテーマにしていま す。それを踏まえて眺めると、重苦しくも美しいイラストには、た くさんのモチーフが隠されていそうです。創作の奥のリアルに目を 凝らす作品です。
明かしてしまうとこの絵本は、『移民・難民』をテーマにしていま
ぼくトリ
不器用で一途なラブストーリー
表紙からはピンとこないかもしれませんが、小さな恋のお話です。
新しいクラスで主人公の"ぼく"がビビッときたのは、鳥 が大好きな女の子。彼女の目に映りたくて、"ぼく"は「鳥になろ う」と決意します。
好きな人の好みに合わせて自分を偽ってしまう、なんて経験は、き っと多くの人にありますよね。鳥になった"ぼく"の姿は不恰好で すが、その一途さと不器用さに、なんともいじらしい愛を感じるの です。
新しいクラスで主人公の"ぼく"がビビッときたのは、鳥
好きな人の好みに合わせて自分を偽ってしまう、なんて経験は、き
あんなに あんなに
「あんなに」を積み重ねて、大人になる
あんなに笑ってたのに、あんなに欲しがってたのに、あんなに掃除 したのに…。
「あんなに、あんなに」と止まらない、子どもを育てるお母さんの ぼやきを詰め込んだ絵本。
クスッと笑えるのに、読み進むにつれて「あんなに」に込められた 意味合いが変わり、親子の移ろいに、じわじわと目頭が熱くなって しまいます。
いつまでも大切にしたい、見守ってきた、あるいは見守られてきた全ての人のための作 品。
「あんなに、あんなに」と止まらない、子どもを育てるお母さんの
クスッと笑えるのに、読み進むにつれて「あんなに」に込められた
いつまでも大切にしたい、見守ってきた、あるいは見守られてきた全ての人のための作