【書評】「吃音 伝えられないもどかしさ」

 *本屋大賞、2019年ノンフィクション本大賞のノミネート作品が発表されました!発表は11月。どの作品が大賞に選ばれるのか注目ですね!この6作品について、当ブログでも随時紹介していきます。
 

 

吃音: 伝えられないもどかしさ

 

”言葉がどもってうまく話せない”。喉のあたりが硬直し、身体が猛烈に強張り「僕」というたった一語でさえも、突っかかってしまう。電話の対応、学校・職場でのコミュニケーションがまともにできない…。いまだに原因さえ突き止められていないこの吃音(きつおん)に悩まされる人々は、日本だけで約100万人にのぼるという。彼らの抱える「もどかしさ」とはどんなものだろうか?自身も吃音を持つという著者が、吃音のある人生を生きる人々を追う。

 

個人的おすすめポイント


 

1. 越えられない言葉の壁

他人とのコミュニケーションが必要とされるとき、重きを置かれるのが”言葉”です。メールやSNSでのやりとりも盛んになっている現代ですが、やはり面と向かって話をすることは、なかなか避けて通れるものではありません。本書で取り上げた吃音を抱える人たちがぶつかる中で特に多かったものが仕事関係です。電話、来客応対、上司、部下とのコミュニケーション、会議など発表の場。吃音によって不信感を抱かれることも少なくないといいます。また、そもそも就職をさせてもらえない場合もあり、こういう環境でストレスを感じ、吃音が重くなる、うつ病適応障害を起こす、最悪の場合では自死まで思いつめるケースも。本書の副題に「伝えられないもどかしさ」とありますが、取り上げられた人たちのお話からは、「もどかしい」では足りないほどの苦悩を感じます。

 

2.それぞれの吃音、その向き合い方

原因も突き止められていない今、吃音は治療の方法も見つかってはいないようです。それでも「普通に話したい」という希望を持ち、懸命にトレーニングに励む人達がいます。本書では数年にわたる取材で彼らの吃音の症状だけではなく、心の変化も追っていきます。あるいは家族。吃音を抱えた息子さんと、そのお母さんの周囲への働きかけによって、学校の環境が劇的に変わっていくのです。理解の進まない状況で、吃音を抱える人たちの向き合い方は本当に多種多様です。その姿にこれから新たな環境を作っていくべき私たちへのヒントも多くあるように思います。

 

感想


 

小説でよく見かける「どもる」ですが、この場合は言いたくないことを言わなければいけない、言葉が見つからない、などの状況が多いように思います。反して、吃音の「どもる」は本人の意思に関係なく引き起こされ、”言いたくても言えない”、全く意味合いの異なるもののようです。

本書では、著者の近藤さんの子ども時代を始め、様々な人の生い立ち、経験、現在を著していますが、その人々自身の考えや状況の移り変わりはあれど、世間の吃音への向き合い方についてはほとんど何も変わっていないのではないか、と感じました。吃音がいまだに原因の解明へ至っていないことなども理解へ繋がりにくい要因なのかもしれません。本書は吃音の抱える問題を切り開く一つの手がかりになるのではないでしょうか。

 

 

吃音を扱う他のおすすめ作品


【映画】英国王のスピーチ


 

 吃音を抱える王、ジョージ6世。妻のエリザベスとともに言語療法士ライオネルの元を訪れ、どもりを克服するためのトレーニングを始めます。ジョージとライオネルの友情と、終盤のスピーチにきっと心を打たれるはず。

 


青い鳥


 

【映画版】 

非常勤講師としてやってきた村内は、先生という立場ながら、言葉がどもり、うまく話ができない。しかし彼は授業以上に大切なものを生徒たちに教えてくれる。

 

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