2025年は巳年。ヘビの年です。
それにちなみ、今回は、 ヘビの出てくる小説 を集めました。
蛇影の館
人間の身体を"衣裳"とし、寄生することで生きながらえてきた5匹の蛇。しかし、蛇を襲撃する何者かの動きがあり、彼らはとある館に召集される。さらにそこには、新たな衣裳候補の、5人の高校生が集められた。蛇は襲撃者を突き止めようとするが、新たな惨劇の幕が開き…。
人か蛇か。猜疑心を煽る、特殊設定ミステリー
人に寄生し、人として生きる人工生命体“蛇“。 彼らの存在は、さまざまな"ルール"の上で成り立っています。例えば、【人の体を離れて24時間が経つと蛇は消滅する。】【他の蛇の"歌"を聞くことで復活できるが、全ての記憶を失う。】これらのルールを踏まえて、犯人とトリックを推理していく、 特殊設定ミステリー です。
人の皮を被った蛇は、同じ蛇でさえ、見た目からは、蛇なのか人なのか判断がつきません。蛇として集まった面々に、実は蛇を狙う人間、つまり、"襲撃者"が潜んでいるのではないか。さらに、蛇が次に寄生するために集めた高校生の存在がネックとなり、事件は複雑化していきます。
誰が蛇で、誰が人なのか。高度な推理と意外な結末を楽しめる作品です。
ぬばたまおろち、しらたまおろち
今も妖怪の伝説が数多く残る小さな村に暮らす綾乃は、アナコンダに襲われたところを魔女に助けられる。怪我の治療のため、魔女のための学校ディアーヌ学園に保護された綾乃。しかし、学園に通うのは様々な妖魅の子どもたちで…。
魔法、妖怪、青春。おもしろさ盛りすぎファンタジー
岡山の小さな村に暮らす綾乃には、秘密の友だちがいます。それは、 人の言葉を話す白蛇 アロウ。綾乃はアロウとの逢瀬の時間をとても大切にしていました。しかし、1つの事件によって、綾乃はアロウとの離別を迫られます。 ここまで妖怪奇譚のようだったストーリーも急転。舞台は岡山の村から魔女学校へ。人間の身ながら魔女の教育を受ける綾乃の、学園ストーリーになるのです。
綾乃の同級生は、のっぺらぼうや雪女、ろくろ首など様々な妖魅(ようみ)。人間世界ではあり得ない数々の事件に巻き込まれながら、綾乃は賑やかな学校生活を送ることになります。
実はアロウと綾乃は相思相愛で、結婚まで約束(!)した仲。別れても綾乃はアロウを想い続けますが、学園一の美男と急接近し、何やら三角関係の匂い。少女漫画のような恋模様にもドキドキさせられます。
蛇の言葉を話した男
昔、森に住む人々は、蛇の言葉を操り、あらゆる動物と通じ合っていた。しかし今、人々は森を捨て、新しくも愚鈍な外の世界へと去っていき…。
ひとつのコミュニティの衰退を描く、長編ファンタジー
主人公のレーメットは、エストニアのとある森に残る、ただ1人の人間。昔この森に住んでいた人々は皆、蛇の言葉を話し、狩りをするのにも、道具の代わりに蛇語を使っていました。蛇語は、森に住む、あらゆる動物と交流する手段だったのです。しかし、やがて多くの人が森を捨て、蛇の言葉も忘れ去ってしまった。
この物語は、すでにほとんどの人が森を去った、レーメットの少年時代から始まります。時代の進歩の届かぬ場所で生きる人々の暮らし、その 衰退と崩壊 が、最後の生き残りとなったレーメットの視点で語られていきます。
じわじわと衰退していく前半。凄惨な崩壊を迎える後半。時代に取り残された人々の末路が、哀れに、それでいて滑稽に描かれた作品です。読んだ後に残るのは一抹の虚しさ…。