今回は、私の大好きな作家のおひとり、いしい しんじ さんをご紹介します。
際立ったストーリーと世界観で読者を魅了するいしいさん。
ノスタルジックな切なさを感じたいときに、ぜひ読んでみてください。
いしい しんじ さんプロフィール
1966年、大阪うまれのいしい しんじ さん。
『麦ふみクーツェ』で坪田譲治文学賞、『ある一日』で織田作之助賞、『悪声』で河合隼雄物語賞を受賞などの経歴があります。
小さな頃から熱心に読書をされて、文章も書かれていたようですが、興味が向いていたのは本だけではなかったようです。特に高校時代はジャズや音楽、絵画、映画製作など、多彩な活動をしていたそうですよ。
その後大学を卒業し、就職を機に上京して雑誌編集に携わります。
その頃のエピソードに、旅行に行った思い出を絵日記を書いて会社の人たちに配った、というものがありました。好評だったそうで、それらをまとめて本を作ったそうです。アムステルダムに行ったときに描かれた「アムステルダムの犬」という題名の絵日記は、出版社の目に留まり、デビュー作となりました。
1994年に会社を辞め、友達とバーテンをやりながらエッセイや対談などの注文を請け負ってお仕事をされていたそうです。
しかし、書きたいことを自由に書けない仕事のスタイルは、いしいさんにとってストレスが溜まるものでした。ついには身体を壊し、一度実家へ戻られています。
実家での滞在中、ふと昔に書いたものの存在を思い出し、それらを読み直したそうです。衝撃を受けたのは4歳の頃に書いたもの。自由に書いたその文章に「ここから初めていけばいい」と思ったと言います。
それをきっかけに東京へ戻り、長編小説『ぶらんこ乗り』を書き上げました。ちなみに実家で読まれた4歳の頃の文章は『たいふう』というタイトルで、『ぶらんこのり』の作中に登場人物の作品として登場しています。
現在は仕事を限定し、京都と三浦半島の港町三崎に居を構えて創作活動をなさっているそうです。
参考→作家の読書道 第137回:いしいしんじさん - 作家の読書道
ノスタルジックな”童話”感が魅力!
いしい しんじ さんの作品は物語性が高く、「大人の童話」とも言われます。
独特な文体と、リアルとファンタジーの融合した世界観は、異国の伝記のようなおもむき。
そしてどこか、懐かしい感じがするのです。
まるで子どもの頃に読んだ物語を読み返すような感覚。
いしい しんじ さんは、優しく温かく物語へ迎えてくれる童心への導き手、ストーリーテラーなのです。
いしい しんじ さん おすすめ本3選
いしい しんじ さんの本の中でも、おとぎばなしのような雰囲気のある3冊をご紹介します。
それぞれが、温かくてちょっと切ない物語。
ぶらんこのり
おばあちゃんが見つけた古いノートの束。
それを何十年ぶりに読んだ私の胸には、あの頃よりずっと深い悲しみが湧き上がってくる。
私は何も分かっていなかったんじゃないか。
幼いころから頭の良い、お話をきかせてくれた、可愛いあの子のことを。
――もういない、弟のことを。
プラネタリウムのふたご
プラネタリウムの投影中、解説員の”泣き男は”場内で泣きわめく双子の赤ん坊を見つける。
双子は泣き男にひきとられ、彗星の名前にちなんで「テンペル」と「タットル」と名付けられた。
年月がたち、双子が十四歳になった頃、町に魔術師のテオ一座が訪れた。
彼らの奇術に魅了されたテンペルは、一座が町を離れるという日、彼らのトラックに乗り込む。
それからさらに五年後、タットルはブラネタリウムの解説員に、テンペルは手品師になっていた――。
麦ふみクーツェ
真夏の蒸し暑い晩、ぼくは”クーツェ”が土をふむ不思議な音を聞く。
とん、たたん。
とん、たたん、とん。
なにしてるの、と聞くと、麦ふみだよ、とクーツェ。
その足音は、何十年たっても、ぼくの耳の奥に響いていた。
――悲しく、圧倒的な、音楽の物語。
まとめ
いかがでしたか?
いしい しんじ さんは「ぶらんこのり」を他人に薦められて初めて読んだのですが、同じ「切ない」でも、他のどの本とも違う切なさがあって、一気に引き込まれました。
いしいさんのような作風の本をもっと読みたいなあと思うのですが、なかなかこの感動は味わえない、私にとっては唯一無二の作家さんです。
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